Anthropic CEOのダリオ・アモデイのエッセイ「Machines of Loving Grace」

AI

画像はDario Amodei氏のブログより抜粋

ダリオ・アモデイ氏からまたまた衝撃的なエッセイが公開されました。

Dario Amodei — Machines of Loving Grace
How AI Could Transform the World for the Better

はじめに

ダリオ・アモデイ氏は大規模言語モデルのClaude AIを開発する企業Anthropicの共同創設者であり、CEOを務めています。もともとはOpenAIの元研究担当副社長でした。

ブログの中でアモデイ氏は、ほとんどの人は、強力なAI(powerful AI) のプラス面がどれほど劇的なものになり得るかを過小評価しているとしており、氏自身は早ければ2026年には強力なAIが出来上がると考えているようです。これはレオポルド・アッシェンブレナー氏の見解と近いものがあります。アッシェンブレナー氏の見解についてはこちら参照

アモデイ氏は生物学/神経科学に詳しいことから、ブログではそれらへのAIの影響を中心に話を展開されています。

では、アモデイ氏がいう強力なAIとは何かについてからはじめましょう。

強力なAI – Powerful AI

強力なAI(Powerful AI)は今日の LLM(Large Language Model:大規模言語モデル) と形式は似ているものの、異なるアーキテクチャに基づいており、複数の相互作用モデルが含まれ、異なる方法でトレーニングされる可能性が、あり次のような特性をもちます。

・生物学、プログラミング、数学、工学、執筆など、ほとんどの関連分野でノーベル賞受賞者よりも賢く、未解決の数学定理を証明したり、非常に優れた小説を書いたり、難しいコードベースをゼロからかける。

・単に「話しかける賢いもの」であるだけでなく、テキスト、音声、ビデオ、マウスとキーボードの制御、インターネット アクセスなど、仮想的に作業する人間が利用できるすべての「インターフェイス」を備えています。すなわち人間がPC上でできる作業はすべてできます。

・受動的に質問に答えるのではなく、完了までに数時間、数日、または数週間かかるタスクを任せることができ、その後は賢い従業員のように、必要に応じて説明を求めながら、自律的にそれらのタスクを実行します。

・物理的な実体はないものの (コンピューター画面上に存在する以外)、コンピューターを介して既存の物理的なツール、ロボット、または実験装置を制御することができます。

・使用できるリソースは、数百万のインスタンスを実行するのに十分にある。

Power AIの発展記載する分野は5つといっています。

  1. 生物学と身体の健康
  2. 神経科学とメンタルヘルス
  3. 経済発展と貧困
  4. 平和と統治
  5. 仕事と意味

4,5はかなり抽象度が高い内容となっているため、ここでは最初の3つの項目について説明します。

1.生物学と身体の健康

Power AIの存在により期待される効果は健康に関するインパクトは下記の5つしています。

感染症の撲滅

21 世紀中にすべての感染症を撲滅することができる。mRNAワクチンに代表されるワクチン技術は、あらゆるものに対するワクチン[1]への道を示しています。

がんの撲滅

がんによる死亡率は過去数十年にわたって年間約 2% 減少[2]しており、現在のペースでいけば、21 世紀にはほとんどのがんを撲滅できる見込みです。

遺伝病の予防

胚のスクリーニング技術[3]が大幅に改善されれば 、ほとんどの遺伝病を予防できる可能性が高い。またCRISPRの後継技術によって、現存する人々のほとんどの遺伝病を治せるようになるかもしれません。

アルツハイマー病の予防

新規の測定法が開発され、原因が特定され、比較的簡単な介入で最終的に予防できる可能性は十分にあります。しかしすでに発症したアルツハイマー病による損傷を元に戻すのは非常に難しいかもしれません。

生物学的自由(Biological freedom)

生物学的自由(Biological freedom)とは、 体重[4]、外見、生殖などの生物学的プロセスは、完全に人間の管理下に置かれることを指します。つまり、誰もが自分がなりたいものを選び、最も魅力的な方法で人生を生きる権利を持つことができるようになる。

寿命の増加

平均寿命は20世紀にほぼ2倍(約40歳から約75歳)に伸びたため、「圧縮された21世紀」にはさらに2倍の150歳になるというのが「トレンド」である。

2.神経科学と心

精神疾患のほとんどはおそらく治癒できる

PTSD、うつ病、統合失調症、依存症などの疾患は、原因が解明され、非常に効果的に治療できると推測している。

精神疾患の効果的な遺伝的予防は可能と思われる

精神疾患のほとんどは部分的に遺伝性[5]があり、身体疾患の場合と同様に、これらの疾患のほとんどは、おそらく受精卵のスクリーニングによって予防できるだろう。

3.経済発展と貧困

1,2の後、強力な AI が開発されてから 5 ~ 10 年の間に発展途上国でどのようになるかについて、言及しています。

健康介入の分配

世界中で健康介入(health interventions)が展開され、多くの病気が撲滅します。

経済成長

あくまで夢のシナリオとしてですが、サハラ以南アフリカの一人当たりGDPは5~10年で現在の中国のGDPに匹敵し、その他の発展途上国の多くは現在の米国のGDPを上回るレベルにまで上昇することになる。

食糧安全保障

AI 主導の第 2 次緑の革命が起こり、発展途上国と先進国の間の格差を埋めることができる可能性があります。

気候変動の緩和

AI を活用した研究によって、気候変動の緩和にかかるコストを大幅に削減する手段が得られる。

参考文献

[1] Clinical trial of mRNA universal influenza vaccine candidate begins

[2] 25 year trends in cancer incidence and mortality among adults aged 35-69 years in the UK, 1993-2018: retrospective secondary analysis

[3] Whole-genome risk prediction of common diseases in human preimplantation embryos

[4] Why Does Ozempic Cure All Diseases?

[5] New insights from the last decade of research in psychiatric genetics: discoveries, challenges and clinical implications

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